先日は、牛乳生産に関わる温室効果ガスの排出が気になって、代替ミルクを探し求めていたんだよね〜。
というあたりのお話をしました。
では、温室効果ガス排出の少ない植物性ミルクを消費していれば、万事解決か?
どうも、そうとばかりは言えなさそうだぞ、と感じるに至った経緯を、今日はシェアさせてもらいますね。
アーモンドミルクはエコロジーなのか?
牛乳消費を控えられないだろうか、と考えた当初、多くの方が恐らくそうであるように、私も豆乳に変えようと思いました。
しかし間もなく、豆乳アレルギーが発覚。
www.murr-ma.work
結構しんどい体調不良に一度ならず見舞われ、医者にも止められ、今は豆乳製品全般と、非加熱の豆腐は口にしないようにしています。
大豆はアレルギー表示義務がないので、出先で知らずに口にしてえらい目に会うこともありますが。
……と、与太話は置いといて。
その後しばらくは、ミルクの消費自体を控えつつ、どうしても、というときはアーモンドミルクを使っていました。
何故って、牛乳、豆乳以外で、近所のスーパーで手軽に買えるミルクがそれだけだったからです。
でもすぐに、以前読んだこの記事を思い出しました。
Your Almond Habit Is Sucking California Dry
アーモンドを食べる習慣が、カリフォルニアから水を吸い取ってカラカラにしてしまうぞ、的な話です。
そういわれてみれば、カリフォルニアの水資源とアーモンドの問題は、以前からしばしば論争の的になっているのです。
経済ニュースを今よりも真面目に追いかけていた頃に、カリフォルニア州の旱魃の影響でアーモンドの卸値が上がって……といった話題を見た記憶もあります。
今回取り上げた記事によると、アーモンドを一粒収穫するために必要な水は1.1ガロン(5L)だそう。
レシピにもよりますが、アーモンドミルク1Lを作るのに必要なアーモンドはおよそ80~100粒程度。単純計算で、アーモンドミルク1Lを作るのには、約400~500Lの水を必要ということになります。
私が消費する1Lのアーモンドミルクが、渇いたカリフォルニアの大地から、500Lもの水を奪い取っている。
さて、これってどうなんだろうか。
「バーチャル・ウォーター」のこと
改めて考えてみると、食料を輸入することは、その輸出国で生産に係った多量の水を、間接的に消費するとだとも言えます。
日本では今のところ幸いにも、直接的な水の枯渇は大きな問題にはなっていません。(山の貯水力の低下自体はあちこちの地域で叫ばれており、将来的には非常に心配な所ですが)
しかし、食料自給率はカロリーベースで40%前後と低値を推移しており、日々大量の食料輸入を通して、他国の水資源を奪い取っている。
国際的な水資源の問題が言われて久しいですが、こう考えると我々、めちゃくちゃ当事者ですね。
そんなことを思っていたら正に、この「間接的に輸入される水」を考えるための概念がありました。
それが、バーチャル・ウォーター。
バーチャル・ウォーター(仮想水)とは、食料や畜産物を輸入する消費国が、自国でそれらを生産すると仮定した時に必要となる水の量を推定したものです。
農作物や畜産物を商品を作るのに、一体どれだけの水が必要なのか?
大まかな数値は、環境庁の提供している仮想水計算機でも概算することができます。
→ 環境庁 virtual water
ここで見てみると、牛乳1Lを生産するのに必要な水は550L。
残念ながら、表中にアーモンドはありませんでしたが、上の計算を踏まえると、アーモンドミルクは500L +αといったところでしょうか。
水の必要量から考えると、あんまり変わらないんですね。
そして、米も「水田」から採れるだけあって、結構なお水が必要。
前の記事で紹介した我が家の甘酒の場合、1合の米と100gの米麹を使ったので、少なくとも1,000L程のお水を必要とする計算になります。
そうなのよ。牛乳より全然多いのよ。
そして、みんな大好き豆乳。
レシピによりますが、一般的に1L作るのには350g程の大豆を使いますので、水の必要量は870L程度。
ちなみに、最近何かと話題の牛肉さんは、バーチャル・ウォーターの数値もさすがです。
100gで2,060L。
ちなみに、カーボン・フットプリントは1kgあたり27kgeCO2と食品ではラム肉に次いで第2位(参考)。
……うん、すごいね。
でも、水の消費量については、温室効果ガスの排出と同じように、多ければ多いほどよくないという単純な理屈には馴染まないように思います。
このあたりをもう少し突き詰めた考え方が、ウォーター・フットプリントという概念です。
「ウォーター・フットプリント」のこと
バーチャル・ウォーターが、商品を作るために必要な水の量に着目していることは、既にふれました。
しかし水については、消費の量だけでなく、どの水源からその水を得ているかというのも、とても大事なポイントです。
水の一滴が血の一滴と同等以上の価値を持つような、乾燥の強い地域と、年間を通して雨がじゃぶじゃぶ降るような湿潤な地域とでは、水利用が環境に与えるインパクトも、当然違ってきます。
また、水質汚染物質の排出やそれに伴う水質変化も、無視できない要素です。
こういった、水利用に関わる包括的な要素を計算に含め、モノやサービスを消費する過程で使用された水の総量を図る概念が、ウォーターフットプリントです。
ウォーターフットプリントの計算は複雑で、しかもいくつかのシステムがあり、目的に応じて適切な計算方法を選択する必要があるとのこと。
めっちゃ難しそう!
と思ってしまいますが、そもそもモノの消費にあたって、こうやって水について真剣な研究がなされていると知ること自体が、とても意義深いことなんじゃないかな、と思います。
私たちは消費を通して、世界の水問題と緊密に関わっているんですね。
総括:わが家の甘酒コーヒーをどう考えるか
前回・今回の記事では、カフェオレを飲みたい私のための、わが家の代替ミルク探しを通して、食品の生産に関わる温室効果ガス排出と、水の消費について学んだことをシェアさせて頂きました。
まとめると、牛乳よりは豆乳やアーモンドミルク 、ライスミルクの方が、温室効果ガス排出は少ない。
でも、水の消費量は牛乳の方が少ないよ。ということがわかりました。
そして水については、消費量だけでなく、その水がどこから水源を取っているか、水の消費と排水が産地にどういった影響を与えているか、という2点も、大事な視点です。
これらを総合して、個人的な現在地としては
① 温室効果ガスの排出に配慮して、なるべく植物性ミルクを選択したい。
② 植物性ミルクの中でも、水資源を提供している産地の状況が比較的わかりやすい、国内生産のものを選びたい。
という2点から、しばらくはライスミルクor甘酒手づくり生活を続けようかな、と思っています。
手づくりならパッケージごみも減らしやすいしね!
この2点からいうと、豆乳は本当に優秀な代替ミルクですね。
これでやっとめでたしめでたし……かと思いきや、もう一つ。
わが家のカフェオレ問題において、考えるべき問題があります。
そう、そもそもコーヒー豆ってどうなん? て話です。
コーヒーのバーチャル・ウォーターは、たった1杯でなんと210L!
産地によっては、開墾による環境破壊だけでなく、低賃金労働による貧困も問題になっているそうです。
そのへん聞き齧っておいて「よし、じゃあ今日からコーヒーやめた!」とならないのが、私の私に甘いところですが。
一消費者としてどういう選択をしていくのが、現地の方達の生活や自然を守ることに繋がるのか。
市場のどういったシステムが問題なのか。
消費を通してせっかく問題を知ることができたのなら、より深く知って、せめて悪くない選択肢を選び取れる消費者に進化していきたいな、なんてことを思いますね。
ホント世の中って、知らんことばっかりやわ。
まとめ
エコ活動って、ただごみを減らすとか、資源を大切にするとか、最初はもっと単純なことのように思っていました。
でも、中に飛び込んで色々やってみるうちに、自分なりにちょっとずつ解釈が変わってきました。
結局「環境問題を考える」って、「自分の生活を、地域や世界との繋がりの中で捉え直す」ことなんだと思います。
これはなかなかの難題です。
真面目に向き合うほど、目を向けなければいけないことは多くなるし、世の中には色々な力学が働いている。
複雑なことだらけで、あちらを立てればこちらが立たず、ということは日常茶飯事。
知れば知るほど、絶対の正解なんてないんだな、と思わされます。
だからこそ続けていくためには、堅実な楽観主義を味方につける必要を感じます。
過去の自分の無知や失敗を恥じても、いちいち過剰に責めたりしない。
無知な自分は当たり前に間違えてばかりだけれど、それを受け止めてあげる柔軟さと、前向きな心さえ持っていれば、いくらでも変わっていくことができます。
せっかく生きているなら、他人にも自分にもやさしくいたい。
知るほどに新しい最適解を見つけていけることを、自己ベストを更新していく伸び代があることを、喜びたい。
そうやってなるべくなら、大らかに日々を楽しんでいける自分でいられたら、と。
そんなことを思うのでした。