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どうして甘酒をつくったのか?【カーボン・フットプリントの話】

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第一回甘酒づくりがまずまずいい感じに成功して、ニヨニヨな今日この頃です。

ライスミルクが牛乳の代替品として機能するなら、コーヒーに甘酒入れても、甘くて美味しいカフェオレ風に仕上がるんちゃう?
という目論見が当初からあったのですが、うん、いいよー。
好みは分かれるかもしれませんが、甘酒コーヒー、元気が出るお味で私の中ではアリ寄りのアリです。

ブドウ糖の直線的な甘味はパンチが強いので、個人的にはやっぱり、もう少し発酵時間短くさっぱり仕上げる方が好みかな。
甘さ控えめにしたら料理にも使えそう。

そして、今のところ一番のお気に入りは、甘酒オートミール
お湯でふやかしたオートミールに、甘酒を加えてあたためるだけの簡単朝食です。
甘酒のストレートな甘味に、オートミールのやさしい甘味とぷちぷち食感がいいアクセントになってくれて、絶妙。
からだはあたたまるし、血糖値が上がってシャッキリ目が覚めるし、腹持ちもいいし、ビタミンB群などの栄養素も豊富だし。
簡単おいしくて、パフォーマンスのいい朝食です。
おすすめ。

でも、そもそも何でいきなり甘酒づくりをはじめたのか?
せっかくなので今日は、そのへんのお話をしようと思います。

牛乳は環境に悪い?

最近、スーパーの牛乳コーナー付近では、牛乳以外の色々な「ミルク」を見かけるようになりました。
昔から馴染みがあるのは豆乳ですが、それ以外にも、アーモンドミルクココナッツミルクライスミルクなどが並んでいます。
自然食品系のスーパーを覗いてみると、ピーミルク(えんどう豆のミルク)やカシューナッツミルクなど、さらに色々な「植物性ミルク」にお目にかかることも。

最近は健康や美容を意識して、牛乳の代わりとしての植物性ミルクが一種のトレンドになっているようです。
そして、環境問題を気にする人にとっては「牛乳の環境負荷」はしばしば話題に上るテーマ。

私も、牛乳消費を減らすために豆乳にシフトしようとして、しかし豆乳アレルギーが発覚して……
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そこから色々ジプシーして、ライスミルクを作ったところで、「どうせご飯を使うなら甘酒の方が栄養になるんちゃう?」という発想から、甘酒づくりをするに至りました。
紆余曲折あったのよ。

では、具体的に牛乳の何が環境にマイナスなのか。
1つの軸は、温室効果ガスの排出です。

「カーボン・フットプリント」の話

地球温暖化の一因といわれている、温室効果ガス。
私たちの日常生活からは、多くの温室効果ガスが排出されており、長年この削減が叫ばれていますが、削減目標を定めたり、削減率を評価したりするためには、それを数値化することが必要となります
この時に使われる指標の一つが、カーボン・フットプリント
Sustinable Japanカーボン・フットプリントの項では、以下のように説明されています。

カーボンフットプリントは、直訳すると「炭素の足跡」。商品やサービスの原材料の調達から生産、流通を経て最後に廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算したものです。
商品やサービスだけでなく、個人や企業の活動についてもカーボンフットプリントを出すことができます。イギリスのWWFは5分程度のアンケートに答えると、自分のカーボンフットプリントの量が分かるウェブサイトを公開しています。

※対象となる温室効果ガスは、CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6

こうして計算されたカーボン・フットプリントは、どのように活用されているのか。 10年も前のニュースですが、こんな記事がありました。

英国:小売最大手テスコ、牛乳製品にCO2排出量を表示
テスコという小売業の大手が、乳製品へのカーボンフットプリントの記載を導入した、という記事。
その中で、英消費者の環境意識について、このような言及がありました。

最新の英国の消費者調査によると「カーボンフットプリント」の意味を正しく理解していた回答者は全体の50%。2008年調査での32%から大幅に上昇した。また半数以上が「CO2排出量が少ない商品を買いたい」と回答。テスコによるカーボンフットプリント表示の推進は、このような消費者動向を踏まえたもの。消費者が適切な製品選択を行うためには、企業による製品・サービスなどが、地球温暖化にどの程度の影響を与えているのかを把握するための正しい情報の提供が不可欠だ。(太字はむるま付記)

うーん。
10年前のイギリスと今の日本とで、はたしてどちらの方が「カーボン・フットプリント」の意味や意義をより理解しているでしょうか。
ちょっと残念な結果になりそうな気がしてなりません。

そして実はこのカーボンフットプリントの表示。
環境庁などの文書を見ていると、日本でも同じ頃に導入しようという取り組みがあったようなのです。
まぁ、今に至ってもびっくりするほどお見かけしませんけれどね……うん。

牛乳のカーボンフットプリント

さてさてそれでは、牛乳のカーボン・フットプリントは一体どれくらいなのか?
どうにも検索の仕方が下手なようで、日本の各メーカーからの数値の発表は上手く見つけられませんでした。
仕方がないので、2010年のこちらの文書から、牛乳に関する数値を抜き書きしてみました。(9年前の海外のデータなので、現在の日本の数値とは相当のギャップがあるかと思いますが)

  • 500mlの牛乳と、ロンドンの地下鉄に8キロほど乗るカーボン・フットプリントはほぼ一緒
    ※ 参考までに、山手線一周の距離が約34.5kmです。2Lで山手線ほぼ一周できるね。
  • 毎日1リットルの牛乳を消費すれば年間527kgCO2e(大気中における温室効果ガス排出量を二酸化炭素の量に換算した単位)
  • この排出量はロンドンからマドリッドへのフライトほぼ同じ

単純計算で、牛乳1Lあたり温室効果ガス排出量は1,444gCO2e程度、ということですね。
乳牛を育てるのにたくさんの飼料や水が必要とされること、牛のゲップに、CO2の20倍以上の温室効果をもつCH4(メタン)が多量に含まれることなどが、この値を引き上げている要因です。

我が家の甘酒(で使ったお米)のカーボン・フットプリント

せっかくなので比較のため、我が家の自家製甘酒ちゃんのカーボン・フットプリントもふんわり計算してみましょう。
幸い、お米のカーボン・フットプリントについては、いくつかの文献を見つけることができました。(これとかこれとか、色々)

製品によってばらつきはありますが、これらの文献によると米からの排出量は1kgあたり1,420〜2,000gCO2e程度のよう。
前回つくった甘酒は、米1合(150g)、乾燥米糀100gを使って、700cc程度できました。
でも、牛乳代わりに使う場面では原液を薄めてるので、実際には1L以上相当という感じ。
なのでこれまたざっくり計算すると、甘酒1L相当あたり355〜500gCO2e程度?(米麹も米に含めて計算)
まぁ、甘酒全体としては、これにさらに使った水とかガスとか麹菌とかの分を加えることになりますが、それでも牛乳の半分くらいになっていそうかなぁ、という希望的観測。

農作物のカーボン・フットプリント

上のお米の文献を見ていて興味深かったのは、その内訳の半分程度を、水田から排出されるメタンガスが占めているということ。
実は、農産における堆肥からのCH4、N2O排出の減少も、温室効果ガスの削減における重要な課題なのだそうです。

堆肥の話題は、我が家もキエーロを飼っている以上、他人事とは言えませんね。
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キエーロは、腐敗・発酵による堆肥化を意図したものではなく、バクテリアに生ごみを分解してもらうタイプのコンポストです。
十分な酸素を与えてあげていれば、排出されるのは理論上、CO2(二酸化炭素)とH2O(水)のみです。
しかし、酸素の供給が不十分で嫌気発酵が起こってしまうと、CH4(メタンガス)の排出に繋がります。

ものぐさで何かとほったらかしにしがちな私ですが、これからはもう少しこまめに混ぜ混ぜしようと思いました。
我が家のメタン排出は、あってもささやかだとおもいますが、何事もチリつもだからね。

まとめ

今回、興味本位であれこれ調べてはみましたが、カーボン・フットプリントの計算はとても複雑で、個人単位での把握は中々難しいな、というのが実感です。
上の計算も本当にいい加減で、そもそもデータソースが異なるので、単純比較すること自体が乱暴な話です。
公の場でやったら絶対怒られるやつやで。

でもこうやって、自分が日々消費しているものの環境への影響を具体的にイメージしてみたり、比較してみること自体は、少なからず意味のあることなのではないかな、と感じました。
やっぱり、知って、実感すると、物の選び方も変わってくると思うんですよね。
なので、上で取り上げたニュースで言及されているように、こういった指標を日々のお買い物に活かせるような仕組みが、もっと広まっていってくれるといいなぁ、と思いました。

そして最初に述べたように、これはあくまで大事な軸のひとつ。
もうひとつ、「水」の問題については、また次回改めて、まとめてみようと思います。

以上、とっ散らかった記事になってしまいましたが、最後まで見て頂き、ありがとうございました。