Reach Out to Ecology

ひとりでも多くの人に、手の届くエコを。

「ゼロ・ウェイスト」という知的冒険

※以下の記事はアフィリエイトリンクを含みます。

↓前回のおはなし。
murr-ma.hatenablog.com

プラスチックゴミを減らせないかな?
そう思って『ゼロ・ウェイスト・ホーム』を手に取ったのだけれど、この本はそんな淡い期待以上の驚きをもたらしてくれた。
家族4人で、1年間のごみが1Lの瓶に収まってしまうというベア・ジョンソンの暮らしそのものも、もちろん大きな驚きなのだけれど、それ以上に、自分の常識や固定観念を爽快にひっくり返された衝撃が大きかった。
お時間のある方は、ちょっと話を聞いていってもらえないだろうか。

5つのR

ゼロ・ウェイストの実践の要は「5つのR」だ。

  1. Refuse 不必要なものは断る
  2. Reduce 必要なものを減らす
  3. Reuse 買ったものは繰り返し使う
  4. Recycle ①②③ができないものはリサイクルする
  5. Rot 残りはすべてコンポストへ → 堆肥化

ごみを減らす工夫としてこれまで断片的に認識していたことは、5つのRに当てはめて考えるととても体系化しやすい。

現在環境問題などについて語られるとき、よく話題に上るのは4番目のRecycleだと思う。
中には、牛乳パックやお菓子の空き箱を一生懸命リメイクして、Reuseに努めている人もいるかもしれない。
だが実は、そういったごみの多くは、そもそも家の中に入ってこないように工夫することもできるのではないだろうか?
そういった、ごみの大本を減らすための視点が最初の2つ、RefuseとReduceだ。
そして筆者は、この入り口がとても大事なのだと強調している。

それぞれについて、順番に見ていこう。

Refuse(断る)、Reduce(減らす)

買い物にエコバックを持参して、「レジ袋は結構です」と断っている人はいるだろうか。
これが最初のR、Refuseの代表的な例だ。
他にも、不要なチラシを断ったり、使うあてのないものを「タダだから」と不必要に貰ってしまわないことも、Refuseに含まれる。

Reduceはここから更に一歩進んで、いま現在必要だと思っているものが本当に必要なのか?
問いかけ、実験を繰り返していくステップだ。
例えば、プラごみが多いと嘆いていた私のごみ袋には、お惣菜やお菓子、コンビニスイーツの容器がこれでもかと溢れていた。
だがさて、これらのものがなくなったら、はたして私は生きていけなくなってしまうんだろうか。
結論からいえば、上記の事実に気づいた翌週には、わが家のプラごみは激減していた。

買い物中、プラスチックカップに入ったプリンに伸ばそうとした手をふと止めて、考える。
さて、今の私にとって、プリンを食べたい欲求と、新たなプラごみを抱え込むストレスと、一体どっちが大きいだろう?
結果、手を引っ込めてそのまま帰宅。
やっぱりプリンが食べたくなったら、レンジで手抜きプリンを作って美味しくいただく。
そんな小さな意識と行動の変化で、驚くほどにごみは減った。
そして本書の中では、更にさまざまな日用品を、エコな代用品に置き換える知恵が紹介されている。

Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)

とはいえ、必要なものをどれだけ厳選できるかは、それぞれのライフスタイルや環境によっても違うし、なくしようのない必需品というのも少なくない。
だからこそ、できるだけReuseしよう、というのが3つめのRだ。 これは別に、空き容器を取っておいて再利用しましょう、といったことに限った話ではない。
たとえば不用品をリサイクルショップに持ち込んだり、オンラインショップで売ったり。
何かを購入するときに、まずユーズドがないか探してみたり。
売り買いにこだわらず、寄付を募っているところに送るのもいい手段だ。

そうやって存分に活用して、いよいよお役御免、となった段階でやっと、Recycleに回す。
リサイクルというのは実は、とてもお金とエネルギーがかかる。
時々、プラごみの輸出問題がニュースになっていたりするのも、処理の速度を上回る量のごみが日本から出続けていることと無関係ではない。
とはいえ、埋め立てたとしても何百年と分解されることなく止まり続けるのがプラスチックなので、ごみにするよりはリサイクルできた方が、ずっとマシではあるのだろう。
そしてそれぞれの自治体では、他にも色々なものをリサイクル回収している。
いわゆる資源ごみだけでなく、紙ごみや衣類なども回収していることを知らない人は、意外と多いように思う。
心当たりのある方は、一度自分の地域のごみ回収について確認してみることをお勧めする。

Rot(堆肥化、コンポスト)

さて最後に、コンポスト、という言葉を聞いたことがあるだろうか。
これは、主に生ごみを土の中に入れていくことで堆肥を作る装置で、園芸をやっている方などには比較的馴染みがあるかもしれない。
コンポストは、装置の仕組みや大きさ、設置場所などで様々なタイプがあり、この本でもそれぞれのメリット・デメリットについてふれられている。

これまでの4つのRでなくせなかった中で、土の中で分解されるものはすべて、最後にコンポストに行き着き、土に還る。 紙ごみや野菜のへた、掃除をすると出てくる綿埃や、髪の毛、端切れetc...
これらはコンポストの中で堆肥に生まれ変わることで、ごみになる運命を免れる。
そうして残ったごく一部のものたちが、ジョンソン家のガラス瓶に収まっていた「1年分のごみ」だったというわけだ。

6つめの「R」

とはいえ、この5つめのRは、私にはいささかハードルが高かった。
仕事で数日間家を空けることが多く、日々の生ごみの量は少ない。
出来上がった堆肥の引き取り手の当てもない。
そして年度末には、引っ越しも控えている。
コンポストについて調べてみた上で、堆肥化のシステムを取り入れるのは、現時点では現実的でないと感じた。

なので私は、最後のRは一旦諦めて、まずはその他のRから試していこうと思っている。
(堆肥化や、我が家での生ごみの処理についてはまた改めて書きたい)
加えて、自分で勝手に6つ目の「R」を設定してしまうことにした。

  • Replace(置き換える)

排出するゴミが、プラスチックごみからより自然に還りやすいものに置き換えられれば、それも一つの成果とする。
5つ目の「R」をいったん括弧でくくる代わりとして、まずはこの6つ目の「R」にフォーカスしてみようと思う。
これは、いつか私がコンポストを手に入れたときに、多くのゴミを堆肥化できる生活を作っていく下準備にもなるはずだ。

「レス・ウェイスト」からはじめよう

『ゼロ・ウェイスト・ホーム』には、ベア・ジョンソン自身が試行錯誤の中で見つけてきた、ゼロ・ウェイストへのメソッドがこれでもか! とばかり詰まっている。
350ページという思いもかけないボリュームにはじめは驚いたが、読み物としての親しみやすさと、項目毎に分けられているリファレンスの良さのお陰で、実際にはボリューム以上に読みやすく、生活に活かしやすい本になっている。
すべてをそのままに、自分の生活に取り入れられる訳ではないし、彼女たちのように本当に限りなくゼロに近いレベルまでゴミを減らすのは、とても難しいことだと思う。

でも、私のように毎週15Lのプラスチックゴミを出していた人が、毎月15Lまで減らせるだけでも、単純計算で年間600Lものプラゴミを削減できることになる。
たった一人の小さな心がけで、これだけの成果が得られるなら、試さない手はない。

そして、この本を読んでから日々を暮らす中で気づいたけれど、「ゼロ・ウェイスト」への挑戦は思っていたよりずっと楽しい。
日々の生活の中で出るゴミをなくそう・減らそうとすることは、これまで当たり前と思ってきたことや、世の中の常識に疑問を投げかけることに繋がる。
そうした中で、意外なものを手放せたり、生活が身軽になったり。
視野が広がって、世の中に対して今まで以上に自由な視点や考え方を持てたような気がしている。

To see what everybody else has seen, and think what nobody has thought.
(誰もが見ることを見て、誰も考えないことを考えなさい)
     ーーErwin Schrödinger

いきなり「ゼロ・ウェイスト」は無理でも、まずは「レス・ウェイスト」から。
ひとりでも多くの人が、自分のできることからチャレンジしていくことで、確実にゴミは減らせる。
そして、それ以上に大切なことについては、ベア・ジョンソン自身も本書の中でふれている。

 この本は、完全なゼロ・ウェイスト、つまり文字通りの「ごみゼロ」を実現しようという本ではありません。現在の製造業のあり方を考えれば、まだそれが無理なことは明らかです。ゼロ・ウェイストとは理念的なゴール、つまり少しでも近づきたい「魅惑の飴」のようなものです。ーー(中略)ーー出るごみの量がどのくらいかなんて、実は重要ではないのです。大切なのは、自分たちの消費の力が地球環境に及ぼす影響を理解すること、そして、その上に立って行動することです。ーー(中略)ーー持続可能な暮らしへの一歩は、それがどんなに小さな変化であっても、私たちの地球と社会に必ずプラスの影響をもたらすのです。

だから、昨今のゴミ問題が少しでも気になっている人は、この本に限らず、色々な本や、インターネットを通して、ゼロ・ウェイストについて調べてみるとよいと思う。
そして私も、このページで自分自身の試行錯誤の様子をシェアしていくことが、誰かの暮らしのヒントになればいいな、と。
そんなことを思っている。