Reach Out to Ecology

ひとりでも多くの人に、手の届くエコを。

体感温度を味方につけよう【省エネ/暑さ対策】

f:id:murr-ma:20210810173616j:plain
こんにちは、むるまです。
暑い日が続きますね。
健康……というか生命維持のために、冷房が必須になってから気づけば数年。
けれど中には、「冷房の風でかえって体がしんどくなる」、「室温が下がってるのになんだか熱がこもってるような感じがする」なんて経験をされたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
かく言うわたしも、冷房の風はあまり得意でなくて、この夏もまだエアコンをつけずに過ごしています。

暑ければ冷房で温度を下げればいい。
そんなふうに簡単にいかないのは、体が温度を感じるのには、気温以外にも様々な要素が関係しているから。

そんなわけで本日は、夏を健康的に乗り切るために、体感温度の基礎知識について整理してみようと思います。

体温は脳で感じている

まずそもそも、体温を感じたり、それを調整したりする仕事は、体の中のどこで行われているかご存知ですか? 答えは脳。
間脳の視床下部というところには、人間の体温を調整する中枢司令部があり、わたしたちが体温をほぼ一定に保てているのは、日々ここが働いてくれているからです

ところで体温というと、脇の下に体温計を挟んだり、おでこに触ったり……といった場面をイメージするのではないでしょうか。
しかしこれは、表面体温と呼ばれるもので、脳が感知している実際の体温とは、少々誤差のある数値です。

脳が感じている体温を知る上で大事なのは、深部体温といって、平たく言ってしまえば内臓の温度
これは、体の中を循環する血液によって、脳に伝えられています
(病院などで測定する場合は、おしりの穴から専用のセンサーを入れて、直腸温として測ります)

さて。
前置きが長くなりましたが、つまり大切なのは、涼しく過ごすためのポイントは、体の表面のひんやり感ではなく、内側に熱がこもっていないかである、ということ。

それでは、熱をこもらせないためには、一体どんなことが重要なのでしょうか。
次からは、具体的に見ていきましょう。

毛細血管を拡張せよ!

深部体温が上がりすぎないためには、産生した熱をきちんと体の外に放出する必要があります。
では、熱はどこから排出しているのか。
答えは簡単、皮膚です。

人間の体の表面近くには、毛細血管という細ーい血管が、網目のように無数に走っています。
毛細血管を流れる血液が冷やされて、体の奥に帰っていくことで、深部の体温が下がります

じゃあ、体温を下げるためには皮膚を冷やせばいいんだな!
と思うかもしれませんが、ちょっとタンマ。
もう少し落ち着いて考えてみましょう。

血管は温められると拡張し、冷やされると収縮する性質があります
効率よく熱を放出するためには、血管が拡張して、たくさんの血液が流れる状態になっている必要があります。
逆に、血管が収縮していると流れる血液の量が少なくなり、熱が放出されにくくなります。

真冬のお風呂上がり、冷たい水を被ってから上がると湯冷めしにくくなる、というのは、この原理を応用した昔ながらの知恵です。
一方で、体温を下げたい熱中症の治療の時などには、皮膚の温度が下がりすぎないように、患者さんへの霧吹きには水ではなく、ぬるま湯を使うのが一般的です。

つまり、涼もうと思って肌を冷やしすぎる、体温を下げるためには逆効果なのです

寝起きのシャワーや蒸しタオル

皮膚温が下がりすぎて、熱がこもってしまうという現象は、クーラーの効きすぎた室内や、夜の寝冷えなどで起こります。

わたしは最近、寝冷えと寝汗解消のために朝に短時間、温かいシャワーを浴びることがしばしばあります。
そんな時は毎回、38℃くらいのぬるめのお湯をかぶるだけでも、体が冷たくなっていることに気付かされます。
朝にシャワーをサボった日、部屋の室温はまだ28℃台なのに、妙に暑く感じるぞ、というときにシャワー代わりに蒸しタオルで肌を温めてみると、体の中にこもっていた熱がスーッと外に出ていって、クーラーをつけるよりずっと爽やかな心地を味わうこともあります。

家で長時間過ごす休日などは、知らぬ間に肌が冷えやすいもの。
クーラーをつけて部屋は十分冷えているはずなのに、妙に暑苦しいと感じた時は、一度、自分の肌が冷たくなりすぎていないか、気にしてみてください

汗は熱を奪うためのもの

そんなふうに、皮膚の毛細血管が開いている状態を保ってあげると、汗をかくことが効率的な体温管理につながります。
一般に、体感温度を下げるために効果的とされている以下のことは、汗をかきやすくしたり、汗を蒸発しやすくさせたりするために大切なことです。

毛細血管が開いている≒肌から熱を奪うことが血管内からも熱を奪う
状態を維持しつつ、気を配ってみましょう。

空気の流れを作る

同じ温度の空間でも、風があるのとないのとで、体感温度は大きく変わります。
これは言わずもがな、皆さん経験があることですよね。

サーキュレーターを使う場合は、天井に溜まった暑い空気と床に溜まった冷たい空気を循環させるために、部屋の対角線上、床から天井方向に風を送ってあげると効率的です

湿度を下げる

これも、梅雨時や台風上陸時のムシムシで皆さんご存知。
湿度が高いと汗が蒸発しにくくなるため、気化熱が奪われなくなり体温を下げるのが難しくなります。
除湿機の電力が気になる場合は、藺草珪藻土など、湿気を吸収するアイテムをインテリアに取り入れてみるのもいいですよ。

濡れタオルで汗を拭く

汗をたくさんかくと、肌の上に塩分が蓄積します。
汗濡れた肌は痒くてベタベタして不快ですが、それだけでなく、体温も下げにくくします
塩水は真水より蒸発しにくいですからね。

岩塩が入浴剤として使われるのは、塩の作用が湯冷めを防ぐのに働いてくれるからです。
しかしそんな塩の効果も、夏には全くありがたくありません。
そんな時は、ぬるま湯に浸して絞ったタオルで、汗を拭ってあげましょう。
ポイントは、乾いたタオルでなく濡れタオルを使うこと
塩気を取り除きながら水分を与えてあげることで、気化熱が体温を下げてくれるのを助けます。

水分・塩分を十分に摂る

これは基本中の基本ですが、そもそも脱水状態だったら汗もかけません。
水分補給は全ての基本ですね。

直接冷やすなら効果的な部分を

それでも汗が鬱陶しい!
いっそ保冷剤とかで思いっきりキーンと冷やしたい!
という場合、大切なのは場所選び。
脇の下や手首・足首、鼠蹊部、膝裏などは、比較的体表近くを太い血管が走っているので、体温を下げるのに効果的です。

輻射熱に気をつけろ

さて。
「毛細血管をカッ開いて気化熱を制せばすべてを制せる!」
……かといえば、そうでもありません。
夏の大敵、輻射熱がまだ控えています。

「輻射熱って何よ?」と思われるかもしれませんが、端的にいえば熱気です。
壁やら天井やら窓やら、いろんなところから迫ってくる熱気

これは物理的にいえば電磁波の目に見えない成分……紫外線とか赤外線とかが体を温めてくれちゃう、冬は嬉しいけど夏にはやっかいなやつです。
同じ28℃の部屋にいても、断熱がしっかりしていて壁がひんやりしているおうちと、昔の建築基準で壁はポカポカなおうちでは、体感温度はまったく違います。

このへんは、家の断熱基準などに影響される部分が相当大きいので、自身の努力でどうにかできる部分は限られますが、たとえば、ベランダや窓の外を簾で遮光してみるとか、断熱レイヤーをぶら下げてみるとか、壁に断熱シートを内貼りしてみるとか……
ちょっとの工夫でも、意外と大きな成果が得られる部分です。

どうしても環境を変えられない場合は、暑い窓や壁から距離を置いて過ごすだけでも、快適さがぐっと変わるはず
温度計だけでなく、体感も大事にしながら、過ごしやすい居場所を探していきましょう。

内から冷やすのもありですよ

最後に。
ここまでは外から冷やすことを前提にお話ししてきましたが、日本には、内から涼を取るための昔からの知恵があります。
そう、寒天です
寒天はゼラチンと違い、体温で溶けません。
これはつまり、お腹の中に入っても、固形の状態を維持し、ゆっくりゆっくり体温に馴染んていくということ。

夏といえばところてんにみつ豆に……と、寒天のお菓子を食べたくなるのは、非常に理にかなった話なわけですね。

まとめ

以上。
健康第一だけど、エアコンの使い過ぎは気になる……
そんな方は、自分の体に備わった仕組みをしっかり理解して、感じて、自分に合った夏の過ごし方を、少しずつ手探りしていってみてくださいね。
汗はかくほどかき慣れます。 今年も暑い毎日ですが、元気に夏を乗り切るために、少しでもご参考になる部分があれば幸いです。