先日、こちらの記事とTwitterでご協力を呼び掛けた、「量り売りショップ潜在需要調査」。
お陰様でたくさんの方にご回答頂きました。ありがとうございます!
本日は、その集計結果のご報告です。
データの処理や分析には多分に稚拙なところがあると思います。
それでも、大まかな傾向を把握したり、消費者の様々な意見を知るために、少しでも役立つものになっていれば、と期待しております。
是非ぜひ、この結果を多くの方にご活用頂けたら嬉しいです。
また、コメント欄にも様々な声をお寄せ下さり、ありがとうございました。
頂戴したご意見の中には、世間一般に対するものか、企業に向けたものか、私個人へのものか判断が難しいものもありました。
私個人に色々と期待して下さっている方には、念のため、開業にあたってのアドバイスができるような知識、ネット上のプラットフォームを整備できるようなノウハウ、広報の手段や大企業へのパイプなどは持ち合わせがない旨、お伝えしておきます。
期待外れだったらごめんなさいね。。
それでは、前置きが長くなりましたが、順を追って結果を見ていきましょう!
今回は、309名分の回答を集計いたしました。
ちなみに本アンケートは、ご協力頂くハードルを少しでも下げるため、「量り売りショップを知っているか?」「量り売りショップを使いたいか?」以外の項目についてはすべて任意回答としています。
回答者数は設問によってばらつきがある旨、あらかじめご了承下さい。
「量り売りショップ」の認知度は?
まず前提として。
このアンケートは私のTwitter、ブログから拡散しました。
なので回答下さった方の構成比は、「環境問題に関心のある方」「ごみを減らしたいと思っている方」に偏っていることが予測されます。
「量り売りショップをご存知ですか?」という質問への回答も、そんな前提に矛盾のない結果でした。
「量り売りショップをもともと知っている」と回答したのは、309人中238人。
「知らない」と回答したのは71人。
個人的に、このアンケートをきっかけに知って下さった方も意外と多くいらっしゃったのは嬉しかったです。
そして、そもそもご存知だった方はどこで知ったのか?
Twitterで拡散したアンケートなのでさすが、Twitter強い!(90/235人)
……のは予想の範疇ですが、以下、上位4項目はインターネット媒体が占める結果となりました。
5位には、最近は雑誌での特集も増えてきていることもあってか、書籍・雑誌(36人)が続く結果に。
また、ゼロ・ウェイスターのバイブル的存在『ゼロ・ウェイスト・ホーム ーごみを出さないシンプルな暮らし』をきっかけとして上げて下さる方も、複数名いらっしゃいました。
メディアについては、国内地上波・衛星放送(19人)や新聞(4人)よりも海外メディア(33人)が優勢。
YouTubeチャネル(27人)も、具体的に名前が挙がっていたのはローレン・シンガー、ベア・ジョンソンといった海外のゼロ・ウェイスターたちでした。
その他(14人)では、海外在住や海外旅行などで実店舗の存在を知った、という方が半数以上を占めました。
量り売りを利用したい理由
そして、今回初めて量り売りショップを知った方も含めた309人中、量り売りを利用したいと答えのは300人、利用したくないと答えたのは9人でした。
この割合は、母集団の構成によって相当に変化することが見込まれるので、あくまで参考にとどめつつ。
まずは、300人の方が量り売りに期待していることについて、見てみましょう。
1. 容器包装などのごみを減らせる(290/300人)
一番多くの票を集めたのは、やはり「ごみが減らせる」という利点。
商品パッケージのごみについては、多くの方がコメントをして下さいました。
ここ1年で実家を出たため、自分で食料や日用品を買う機会が増えました。 恥ずかしながら、普通に暮らしているだけで大量のごみ(特にプラスチックの包装)が出ることを初めて知り、とても驚いたと共にショックでした。 2人暮らしなのですが、毎週2回も40Lのゴミ袋を使ってゴミ出しをしています…。 環境への配慮やゴミ袋が有料の地域なこともあり、生活で出るゴミを減らしたいと思っております。(後略。強調は編者)
他にも、はじめてのひとり暮らし、新型コロナによるテイクアウトや自宅調理の増加など、ごみの多さを気にするようになったきっかけは人それぞれ。
また、ごみを減らしたいと考える理由も、人それぞれでした。
やはり多かったのは、「海洋生物の被害をなくしたい」「地球温暖化を食い止めたい」といった、環境意識に根差したご意見。
ごみ問題についてはつい先日、こんな報告があったこともまだ記憶に新しいのではないでしょうか。
そしてそれ以外に、「過剰包装は捨てるのが手間」「地域指定のごみ袋が高い」「家の中にごみが多いと不衛生に感じる」と、購入者自身にとってのごみ削減のメリットについて言及下さっていた方もいました。
これ、少しでも多くの人を巻き込んでいくためには、とても大切な視点ですよね。
2. 必要な分だけを購入できる(234/300人)
次いで多かったのは、自分にとって必要な分だけを購入できる利点。
今回のアンケートには、ひとり暮らしの学生さん、社会人から、ご夫婦、親子、3世代やその他親戚も交えた大所帯まで、様々な世帯構成の方が参加して下さいました。
なので、パッケージ売りだと多過ぎるから少量買いたい、というご意見も、一度に大量に購入したい、というご意見もありました。
どちらの要望にも対応できるのは、量り売りならではのメリットですね。
また、はじめて購入するものについては、失敗を避けるために少量ずつ試してみたいというニーズもあるようでした。
こちらについてはまた後ほど、具体的な品目と併せてご紹介します。
「必要な分だけ購入できる」ことのよさとしては、無駄な出費が抑えられることだけでなく、家庭からの食品ロスを減らせるという点にふれている方も多かったです。
しかしその一方で、こんな懸念に言及される方も。
量り売りにしたことで消費期限が短くなり、お店側の廃棄が増えたというニュースを観ました。廃棄問題をクリアして、ゴミの出ない持続可能な買い物が気軽にできる日が来る事を願います。
これは私も、個人的に気にかかっていた問題です。
自分の目の前からごみが減っても、世の中トータルでの食品ロスがかえって増えてしまうようなことになったら、悲しいですよね。
こうした問題については、こういった提案をして下さる方もいらっしゃいました。
全商品を量り売りにすることが難しいとしても、主力商品のひとつふたつを量り売りにしてくれるだけでも、ゼロウエイスターとしては嬉しいです。地元のお茶屋さんは普段使いのお煎茶各種を、乾物屋さんはお豆さん各種を、量り売りにしてくれています。全てが量り売りのバルクストアがいいのはもちろんですが、既存のお店でしたら主力商品だけを量り売りにするところから始めていただければリスクも低いのではと思います。
まずは商品の回転が安定している主力商品のみを量り売りにすることで、ロスのリスクは避けながら、少しずつ量り売りを広めていけるのでは、と。
非常に現実的かつ前向きなアイディアですね。
すべての品物でなくてもいいから、量り売りを始めてくれるお店が増えたら嬉しい。
という趣旨のご意見は、他にもたくさんの方が添えて下さいました。
当たり前なようで、大切な視点だと感じます。
そのお店での取り扱いが1品目であれ2品目であれ、「量り売り」自体が日常よく見られる光景になれば、自然、利用する消費者も増えます。
実際、現在は量り売りが広く普及しているフランスなどでも、最初はナッツやドライフルーツといった、限られた品目から導入されていたようです。
広めていくためには、まず続けていけること、倒れないことが大切。
意欲のある販売者さんを支えていくためには、我々消費者にも、焦らずに寄り添っていく胆力が必要なのでしょうね。
3. 色々な種類の商品を購入しやすい(99/300人)
こちらは上と重なる部分もありますね。
具体的には自由記載欄で、ナッツ、ドライフルーツ、お菓子、雑穀米に使うような穀物、スパイスなど、色々な種類を選べることで楽しみが広がるものを上げて下さっている方が多かったです。
4. こだわりの商品を取り扱っていそう(99/300人) /おしゃれなイメージがある(24/300人)
残りのふたつは、量り売りに付随する事実というよりも、「こんなイメージを持っている人が多いかも?」と思って設けた選択肢です。
そして実際、以後の解説でもふれますが、今回のアンケートにご協力下さった多くの方は、量り売りショップに対して「オーガニックやフェアトレード品など、こだわりの商品を扱っていそう」「オシャレそう」といったイメージを持っているようでした。
ごみ問題をはじめとした環境問題に関心を持っている方にとっては、地産地消、オーガニック、フェアトレード、アニマルウェルフェアといった面でも安心できる商品を期待するというのは、ごく自然な流れかもしれません。
しかし実はその一方で、こうしたイメージから、「価格が高くて利用できない」「敷居が高そう」と、量り売りに対して近寄り難さを感じてしまっているという声も、相当数寄せられました。
これについては後ほど、また詳しくお話していきます。
5. その他
その他の自由記載では、環境問題に対する思いや、温暖化対策に取り組む事業者を応援したいという気持ちを語って下さっていた方がほとんどでした。
そんな中で、また違った視点で面白いな、と感じたのはこちらのご意見。
容器持参できれば移し替えの手間がない
な、なるほど、そんなメリットが!
確かに、日用品をすっきりと機能的に管理するために、商品パッケージから中身を移し替えて利用されている方、結構いらっしゃいますよね。
そうした方にとって、ご自宅で使っている容器をそのまま持参することは、詰め替えのひと手間を省くことにも繋がるんですね。
量り売りを利用したくない理由
続いては、量り売りショップ利用をためらう理由の内訳です。
結果は、「容器を持参するのが負担だから」6人、「割高なイメージがあるから」5人、「商品購入に手間や時間がかかるから」4人、「不衛生だと感じるから」2人でした。
そして、「その他」を選択されていた内のお一方は、ご自身の思いとしては量り売りを利用したいけれど、マイクロカプセル移香による香害が避けられないため利用できない。
という、厳しい事情を教えて下さいました。
残りのお二方のご意見は、また違った角度ながら、これまたお店の人の参考になるのでは?
と考えさせるものでした。
普段の買い物でグラムの感覚で買い物しないので、買い物中に「なんグラム必要か?」考えるのが面倒
たくさん取ってしまい、高くついたり使いきれなかったらという不安がある
確かに、普段何気なく袋詰めのものを買っていると、どれくらいの量が必要か、使いきれるか、とっさに判断が難しい商品もありますよね。
こういった、ちょっとしたプラスアルファで改善できる問題点、他にもないでしょうか?
それを探る目的で量り売りショップ推奨派の方に投げかけた質問への回答は、蓋を開けてみると、その多くが「使いたくない理由」と相通じるものでした。
というわけで続いては、量り売り店の実際の利用状況。
そして、利用を妨げている要因について、見ていきましょう。
量り売りの利用率
さて。
量り売りを利用してみたい人が大多数を占めた今回のアンケートですが、「いま現在、容器持参で買い物をする機会はありますか?」という問いに「ある」と答えた方は、少数派でした。
307回答中、「ある」は97名。「ない」が210名。
また、「ある」に振り分けた回答でも、お店が遠方でたまにしか利用できなかったり、コーヒー豆を量り売りしてくれるところがあるだけだったりと、回答下さった方の需要が十分に満たされていないケースが少なくありませんでした。
一方、パッケージフリー購入未体験の方からは、こんなコメントも頂きました。
生活クラブのリサイクルびん※を利用した調味料類の購入をよくしています。容器持参とは違いますがゴミを減らす取り組みとして応援していきたいです。
※ たぶん、リユース(リターナブル)びんのことですね^^*
生協の食材宅配サービスを提供されている生活クラブさんは、リサイクル容器からリユース容器(回収して再使用可能な容器)に切り替えるなど、環境に配慮したしくみを積極的に導入していることでも有名です。
公式サイトを拝見したらなんとこの取り組み、1994年から始めていたのだそう。
時代が追い付いた、というのは、正にこういうことを言うのでしょうね(今はまだ、追いつきつつある、という感じですが)
実は今回、宅配での量り売りを希望されている方が少なからずいらっしゃることがわかりました。
生活クラブさんのような環境志向の宅配業者さんのニーズは、今後ますます、高まっていく方向にあるのかも知れませんね。
量り売りを普及させるために必要なことは?
話が少々わき道にそれましたが……
それでは、多くの方が容器持参や量り売りを利用したことがない理由は何か?
これに対しては210名中206名の方が、「近くにお店がないから」と回答されました。
ま、そりゃそうだ。て感じかもしれませんね。
量り売り普及のためにまず一番足りないものは、実施しているお店の数。
しかし、それで終わってしまっては話も詰まりません。
一体どうやったら、量り売りがもっとアクセスしやすく、日常的な選択肢になっていくだろう?
以下では、皆さんから寄せられたご意見・アイディアをご紹介していこうと思います。
1. お店がどこにあるか知りたい!
「近くにお店がない」と答えた方からは、もっと量り売りショップが増えてほしい、という希望とともに、そもそも量り売りに対応してくれる店舗がどこにあるかわからないという声も多く寄せられました。
そしてそれと併せて、以下のような要望が上がりました。
1-1. 調べるためのインターネットサイトやアプリがほしい
具体的な対策としてはやはり、インターネットで情報にアクセスできるようになれば、という期待があげられていました。
SNS等で、容器持参を推奨していることを明記してあれば利用しやすいです。
アプリなどで、量り売り店一覧がわかること。
量り売りをやっているお店のサイトをぜひ、作ってください!情報は提供します。
各店がSNSやサイトで容器持参可能であることをわかりやすく明記してくれると、購入者にとっては大きな後押しになります。
加えて、情報をまとめて調べられるようなサイト・アプリがあったら、確かに便利ですね。
量り売り店の一覧を作って下さっているサイトとして、私が知っているのは、プラなし生活さんのバルク・ショップ一覧です。
こちらは、現在もコンスタントに更新して下さっていて、大変参考になるサイトさんです。
他にも、「食べログ的な口コミサイトとかあったらいいですね」なんてメッセージを下さる方もいて、確かに、地域の口コミを共有できるような情報交換の場があったら、特にお店の少ない地域などでは助かるかもしれないなぁ、なんてことを思いました。
絶対、増えるべき。私も認知が足りないと思うので、周知させる為と需給者をマッチングさせる情報プラットフォームを構築したいです!
そして、こんな意欲的なコメントを下さる方もいらっしゃったり。
めちゃくちゃ頼もしい!
こういうプラットフォーム、実店舗に限定せず、環境志向の強い通販店舗さんとかも巻き込んでいくと、個性的なお店同士が繋がりを持てたり、それまで通販でしか買えなかった商品を取り扱ってくれる店舗さんが増えたり、なんて展開もあったりするのかしら……
ついワクワクと、色々妄想してしまいました。
2-2. 量り売りできることをアピールしてほしい
他には、量り売りや容器持参に対応しているお店がもっとわかりやすかったらな。
というご意見もありました。
量り売りに限らず、容器持参で購入可能なお店はわかりやすいところに書いておいてもらえると利用しやすいです。
量り売りをしていることを示す統一ラベルマーク(店先に表示するステッカーなど)
量り売りの統一ラベルマーク、いいですね!
バラバラの表示よりもパターン認識しやすく、街中で遭遇した時に存在に気付ける確率がぐっと上がりそうです。
実際、量り売りショップとして運営されているお店以外にも、頼めば容器持参に対応してくれるお店には、ちょこちょこ遭遇します。
量り売りを広めていくためには、新しいお店を増やすだけでなく、既にあるお店を巻き込んでいくという視点もとても大切ですね。
しかし実のところ、量り売りショップ以外での量り売り・容器持参購入は、お店側が勧めているというより、買う側はお願いして対応して頂いている場合がほとんどだと思います(実際、お願いして怪訝な顔、面倒くさそうな顔をされることもあったりします)
はたしてそういったお店が、自らわざわざ容器持参に対応している旨を掲示してくれるでしょうか?
そう考えると、ここについては我々購入者側からのアプローチも不可欠なのでは?
と思います。
「容器持参への対応を希望している購入者が潜在的にいること」「容器持参の受け入れや対応の明示が、顧客開拓の契機になり得ること」を、お店の方にもっとアピールできないか。
そうした時に根拠になるデータが得られないかしら、との期待もあり、今回のアンケートには
「複数の商品が選択肢に上った際、量り売り購入できることは選択の決め手になりますか?」
という質問も盛り込みました。結果は以下の通り。
「量り売りで購入できるものを選びたい」、と答えた方は303名中251名。
偏った母集団での調査ではありますが、パッケージフリーで購入できることが購入動機になる層もいると知ってもらうという意味では、それなりにインパクトのある数字ではないでしょうか。
また中には、こんな殺し文句を置いて行かれる方もいらっしゃいました。
商品の一部でも量り売りがあれば、他の商品もその店で買ってしまうかも知れません。
うーん。
テレビ番組の町ブラロケで配ってるようなステッカー・張り紙と、こういうことをしたためた説明用紙のセットとか作ったら、良い布教ツールにならんかしら……?
なんてことを思ったりするわけですが。
だ、誰かー! デザイン力に覚えのある人ー!(叫びつつ逃亡)
2. 入店しやすく・利用しやすくしてほしい!
さて、気を取り直して。
ここからは実際の店舗利用に踏み込んで、こんなことに配慮してくれると利用しやすいな、というご意見です。
先ほどふれた、量り売り店に足を踏み入れるのは、何だかちょっとハードル抵抗があるというご指摘。
実はこれ、「利用したくない派」だけでなく、「利用したい派」の人からも上がっていました。
敷居が高そう
現在の日本の量り売りショップは、ショップ自体に「意識高そう(意識低いので負い目がある)」「割高でも良いものを提供しています(普通で安いものがほしい)」「地元密着(一見だと入りにくい、顔を覚えられるのは抵抗がある、お店の人との交流は求めていない)」というイメージで、総じて入りにくいです。(後略)
そこで以下では、入店・利用に対する心理的ハードルを下げるため、くり返し利用しやすくするために、具体的にどういった課題があるのか、整理します。
2-1. 量り売り対応の掲示がほしい
これは、上であった指摘と重なりますね。
「容器持参対応」のステッカーや張り紙があると、お店の方もウェルカムであることが伝わり、入店のハードルを下げることにも繋がります。
2-2. 利用方法や取扱い商品をあらかじめ知りたい
量り売りは、日本ではまだまだ馴染みが薄いシステムです。
当然、はじめて利用する方にはたくさんの不安や戸惑いがあります。
そうしたこともあり、お店についてはあらかじめ十分な情報収集をしたいと感じている方が多いようでした。
「容器持参大歓迎」のような張り紙やSNSでのアピールがあると、容器を持って行きやすい。容器の形や素材のアドバイスもあると尚嬉しい。
初めて利用する人向けに、お店の利用方法が書いてある紙をお店の前やネットで見れるようにしてあると嬉しいです。また、各商品のおおよその値段(100gで○○円など)も事前に分かるとお店に入りやすくなるのかなと思います。
ほしい情報として挙げられていたのは、お店の取り扱い商品や価格帯、対応している容器、利用方法など。
そしてほとんどの方は、店内よりも、店頭やお店のホームページなど、入店前に確認できるかたちでの情報提供を希望されていました。
たしかにそうですよね。
オシャレなレストランの前を通りかかったとき。
たたずまいに惹かれても、どれくらいお高いお店なのか、何人向けを想定したメニュー設定なのか、何も判断材料がないと、入りづらさを感じて結局通り過ぎてしまったりします。
ところが同じお店でも、メニューや価格帯、ラストオーダーの時間が書かれた黒板がちょこんとかかっているだけで、入りやすさはぐっと増します。
特に、店員さんに声をかけられるのをプレッシャーに感じてしまうタイプのお客さん(私のことですが……)の場合、事前情報を仕入れまくってなるべくスムーズに買い物を終えたいというニーズは高いと思います。
また、上でもふれた通り、量り売りのお店に対しては「高そう」「こだわりが強そう」というイメージを持っている方が少なくありません。
おしゃれさも大事だけど、初めて利用する人が入りやすい、とっつきやすいようにしてほしい
「なんかオシャレだけど、高そうだし入りづらい……」という印象から、前を通り過ぎてしまうお客さんを引き寄せるには、入店前に、お店の"実際"を知ってもらえるような工夫が有効なのかもしれません。
また、量り売りに慣れていない人がとっつきやすくなるための工夫がされているか、という点についても、ご意見が寄せられていました。
ポイントや割引制の導入、初回はサポートしてくれる対応。味見や味比べなど少量でお試しできると楽しいかも。
実際のgと目で見る量がわかりやすいかどうか。(100gの見本が置いてある等)
グラム一定の定額販売もあると利用しやすいです
このへんは、先ほどご紹介した「どれだけ買ったらいいかわからない」という困りごとに対する、ひとつの解決策にもなるかもしれませんね。
お店をされている方、これから始める予定の方、ぜひご参考にしてみて下さい。
2-3. ターゲット層にあった価格設定
さて。ここまで、「量り売りショップは敷居が高い」という話を散々してきました。
そこを語る上でどうしても避けて通れないものとして、価格の問題があります。
そしてこれについては、 高くてもかまわないので品質に配慮された商品がほしい、という方から、日常的なものだから、一般的なスーパーと変わりない価格帯のものがほしい、何なら容器分割安だと嬉しい、という方まで。
「量り売り使いたい派」の中でも、様々なご意見がありました。
そうした中で、恐らく一番平均的なのは、こうしたご意見かな、と思います。
オーガニックにこだわり過ぎると、高くなりすぎて敬遠しそうでみんなに広まらないと悲しいので、普通のものもおいて欲しい。
どちらかを取るというより、幅広い選択肢があるというよね、といったところでしょうか。
実際、商品価格については、こんな声もありました。
量り売りはゴミを減らせてエコなのは分かりますが、料金が高すぎます…少しでも安くなれば利用頻度もあがると思います。
買いたいのに買えないのって、悲しいですよね……
これも恐らく、「量り売りだから」というより、取り扱っていた商品そのものが高価だったことでついてしまったイメージである可能性が高いかな、と思ったりしました。
反対に、量り売りきっかけで商品を購入した経験について、こんなことを書いてくれていた方もいらっしゃいました。
有機グラノーラ。包装資材がないだけで価格が40%も安くなっていたから。
40%はさすがにすごい!
これほどではありませんが、わたしが時々お世話になっているすみれやさんでも、量り売りのオートミールはスーパーで売られているもの(notオーガニック)よりお得ですし、パック詰めでも売られている祝島ひじきは、量り売りの方がパッケージ分お安くなっています。
最近一部のローソンで量り売りが始まったエコストアの洗剤も、公式サイトを拝見すると、量り売りの方がお徳に購入できるようでした。
しかし、量り売りで取り扱っている商品が高価なものばかりになると、「量り売り」=「高価で非日常的なもの」という偏ったイメージに結びついてしまう可能性もあります。
量り売りを利用したい、と思っている方の主な動機は、既にふれた通り「ごみの削減」で、ごみを減らす理由も、人それぞれです。
量り売りを利用したい方のすべてが、必ずしもオーガニックやフェアトレード、アニマルウェルフェアに高い関心を持ち、そうした商品を求めているわけではありません。
なので、どういった価格帯の商品を取り扱うかは、そのお店のある地域やお店のコンセプトに応じて、想定するターゲット層を考えながら見定めていく必要があるのだろうな、と感じました。
2-4. 衛生管理についての開示
そして、このご時世だからこそ余計に、という部分もあるかもしれませんが、衛生管理についてのご意見も多かったです。
衛生面については既存の食品メーカーや飲食店と同レベルを求めます
衛生面が気になるので、なるべく不特定多数が直接触れられないような工夫があれば利用しやすい
量り売りに対する不安点は商品の衛生管理です。海外などの量り売りショップをみると、大きな瓶に乾物や穀物が入っていますが、湿気の多い日本では品質を保ったままある程度の期間保存できるのかという不安はあります。
(前略)日本人は衛生面を気にするので、量り売りするにあたって商品管理の情報も広く開示してもらいたい。現在コロナ禍にあり、こういう事態の時安全に供給・購入ができるのか?海外の量り売りショップはどういう対応をしているのか知りたい。
衛生管理についての関心は、商品を詰めたり、購入したりといった場面だけでなく、そこに至るまでの商品管理にも及んでいるようでした。
お客さんからは見えにくいバックヤードでの取り組みについて、サイトでの掲載や店内での掲示などのかたちで伝えていくことが、安心や信頼に繋がるならば、これは取り入れる価値のある工夫かもしれませんね。
店内の設備については、こんなご意見がありました。
Taps for refills (less touching, avoid products to be open) リフィル用のタップ(あまり触らなくて済む、商品が外気に触れるのを避けられる) ※ 編者意訳
食品は持参容器の衛生面に注意が必要、以前行ったお店は容器の(スポンジの届きにくいビンなど)洗浄方法を掲示してあり安心でした。
専用ハードウェアの整備は、中々すぐに対応できる部分ではないかもしれませんが、容器の衛生管理について案内の掲示・配布をするのは、比較的取り組みやすいかもしれませんね。
こうした衛生面への配慮は、食品の品質保持や感染症予防に重要であるだけでなく、香害やアレルギーで困っている方にも、安心して利用してもらいやすい環境づくりに繋がるのではないかと思います。
2-5. 容器について:幅広い持参容器への対応、デポジット瓶等の活用
そしてもう一つ。量り売りでなくてはならない、「容器」について。
これは後程、「指定容器の購入について」の回答でもふれますが、今回のアンケートでは、容器についてのこだわりはその人のライフスタイルと密接に結びついている、つまり、人によってばらつきが大きい事柄なのだなぁ、ということをしみじみと感じました。
そしてそもそも、持参の容器を使いたい人もいれば、容器持参を負担に感じる人もいるわけです。
そんな中で具体的には、どんな要望やアイディアがあるのか?
まずは、容器持参への要望や実際の体験談を見ていきましょう。
店専用の容器に限定されると容器ばかりが家に増えるのも困る。「計量」なので専用容器にこだわらず入れてくれたり、持参したビン容器は回収して店の容器に入れてくれるなど循環させてくれるとよい。飲料などは容器の清潔さも重要だが、ナッツなどは袋でも容器でもかまわないと思う。
福岡在住です。近くにポコムーチョという名前の量り売りショップがあり、休みの日はジップロック持参でオイルやナッツ、ジンジャエールのもと、スパイスなど購入しています。特にスパイスは、カレーを作る際にほんのすこしだけ欲しい時などかなり活躍してます。またかなりお客さんも多いです。年齢層も幅広いです。(後略)
容器持参で割引。私は割引がなくても利用すると思う。でも割引から興味を持つ人もいると思うので。(後略)
量り売りを実施しているお店によっては、容器購入を義務付けているところもあるようですが、ごみや無駄を減らしたい、という向きには、やはり馴染まないところがあると思います。
また、瓶や箱状のしっかりした容器だけでなく、袋状のものでも対応してもらえると、容器の持ち運びを負担に感じている方からも受け入れられやすそうですね。
我が家でも、いつもカバンに入れているペラッペラのシリコンバッグが、とっさの量り売り購入で大活躍しています。
一方で、容器を自分で用意すること、自宅で保管したり持参したりすることに負担を感じている方もいらっしゃいました。
(前略)使い捨て容器はなんといっても便利だし清潔。容器持参は、洗う→保管→持参が果てしなく面倒です。
これって正しく、いま市場に使い捨てパッケージが溢れるに至った理由なんだと思います。
だからこそ、パッケージフリーの普及のためには、これを上回るメリットを見出すことや、少しでも負担を小さくするための工夫が必要なのでしょうね。
実際、この方は「量り売り」というシステム自体は前向きに捉えて興味を持っていらっしゃるようでした。
それに、普段は容器を持ってくる方も、忘れてしまうとき、予定外の買い物で容器を持っていないときはあります。
そうした事態を想定して、アイディアを挙げて下さっている方もいました。
容器を持っていない場合でも借りることができるといい。デポジットの瓶にするなど。
カナダはバンクーバーの事例ですが、使い終わったビンやプラスチック容器を自由に寄付できるようになっていました!店舗には容器も売っていますが、とても便利なシステムだなと思いました。
置き傘のように、量り売り用の容器を置いておけるスペースがお店にある。デポジットとかで共有できるとなおいいと思う。
容器販売におけるデポジットとは、容器代を上乗せして販売し、使い終わって返却した際に容器代が戻ってくるしくみのことです。
買い物をするお店が定番化している場合には、非常に相性のいいシステムですね。
また、空き容器の寄付とリユースは、今回のアンケートでご協力頂いたnue by Totoyaさんや、前述のすみれやさんでも行われています。
オリジナルの容器を作成・販売するのに比べて環境負荷も少なく、コストもかからず、比較的色んな店舗で導入しやすいシステムだと思います。
3. 色んな業態のお店がほしい!
さて、「量り売りの普及に必要なもの」の話もやっとこ最後の項目です。
頂戴したご意見は、そもそもどういったお店で量り売りを取り扱ってほしいか、という話にも及んでいました。
確かに、店舗の立地や業態は、日常的な利便性を考える上では避けては通れませんね。
そしてこれについても、人によって様々なニーズがあることがわかりました。
3-1. スーパー・コンビニ
今回の自由記載では、業態として、スーパーやコンビニでの量り売りの導入を希望している方が最も多かったです。
もともとこのアンケート、私としては専門の量り売り専門店を念頭に置いていたところがあったので、これには少々不意を突かれました。
ですが考えてみればなるほど、納得の結果でもあります。
コンビニやスーパーで自販機で買うように気軽に計り売りできたら助かります
まだ近くにないので、やっぱりスーパーなどで日常的に買えるようにして欲しいし、店頭に目立つように容器やカップOKを掲示して欲しいなと思います。
スーパーの一角に量り売りがあれば、そこから興味を持ったりする人も増えるかもしれない。
個人商店が少なくなっている現代では、日々の食材や日用品を買うのに、スーパーを利用している方がほとんどなのではないでしょうか。
アクセスのしやすさを考えるならば、"普段のお買い物の場"で量り売りが導入されることほど便利なことはありません。
また、もともと店舗数がある分、「お店が少ない」という難点の解消にも繋がるのでは、という点を指摘下さった方もいらっしゃいました。
集客力が高い分、メーカーへの影響力も大きいでしょうし、イオンのようなプライベートブランドを有する企業では、生産ラインからしてロスの少ないシステムを考えてもらうことにも繋がるかも……等々。
考え出すとなるほど確かに、スーパーやコンビニならではの影響力には、色々な可能性の広がりを感じますね。
3-2. 個人商店
一方で、個人商店ならではの買い物体験や、信頼感への期待を綴られる方もいらっしゃいました。
商店街が量り売りをしてくれると嬉しいです
歩いて行ける範囲に個人商店がなくなっているので、入りやすいオシャレな感じのお店があればいいと思います。
(前略)量り売りの専門店なので信頼できますし、もっと気軽に利用できるといいと思います。
Twitterでは、「ちびまる子ちゃんの商店街のような買い物風景に憧れます!」と、ほんわかするコメントを下さった方もいらっしゃったり。
個人商店が減っていることに寂しさを感じていたり、地域に根差した信頼感や親しみやすさを求めていらっしゃる方も、少なくないんだな、と感じました。
ただ、こうした要望の多くは、自宅や普段の買い物場所から、無理なくアクセスできる範囲にお店があることを条件としているという点には、注意が必要です。
そのお店を応援するためなら、多少遠くてもわざわざ足を運びたい、という意見は、あるにはありましたが少数派でした。
寂しいようですが、これは今回回答下さった方の多くが、それだけ量り売りが日常のものとして定着することを期待してくれている、ということでもあると思います。
そうしたことを考えると、量り売りショップも単独でポツンと立っている、というよりは、例えばスーパーのすぐそばにあるとか、個人商店の集まるエリアや商店街にある、という方が、買い手の理想とするイメージには近いのかもしれませんね。
そうして、量り売りショップが起点となって、他のお店にも量り売りを広めたり、ゼロ・ウェイスト買い回りマップを作って、パッケージフリーにお買い物ができる量り売りショッピングエリアをつくれたら楽しそう……等々。
はい、すみません。相変わらず妄想ばかりしております。(えへへー)
3-3. 配送サービス・移動販売
そして実店舗だけでなく、配送サービスや移動販売への要望も結構ありました。
量り売りと合わせて、配送サービスもあると良いです!容器持参で買っても重たいと気軽に利用できないように思います
ネットでの取り扱いがあると地方でも利用できる、少量からでもOKだとうれしい(後略)
車に乗らない為重たい物を持つのは大変なので、3000円以上購入の方にはリサイクルダンボールを使用した無料配送サービスなど行ってほしい。
店舗が近くにないので、移動販売があるといいな。
今回のアンケートでは、直接的な店舗への要望だけでなく、限られた移動手段や買い物の機会の中で、まとまった量の買い出しをしなければならない大変さについてふれているコメントが、少なからずありました。
中には、量り売り店が近くにできたとしても、子連れ・徒歩での買い物だと購入できるものが限られてしまうかも……という悩みを教えて下さる方もいらっしゃったり。
そのへんも考えると、自宅に商品を届けてくれるサービスは、結構幅広い需要があるのかもな、と感じました。
通販といえばしばらく前に、「LOOP」というリユース容器での通販サービスが日本でも開始されることが話題になりました。
これまた、使い捨て容器を減らせる素晴らしい取り組みですが、現在導入が予定されているのは東京のみ。
「関東の都市部以外でも、量り売りが利用できるところが増えてほしい!」という声に答えてくれるものでは、まだありません。
また、上の方でご紹介した生活クラブさんも、対応している地域は限られています。
ですので、お店も、宅配サービスも限られているような地域での開業を検討されている方は、こういったニーズがあることも、頭の片隅に留めておいて頂けるとよいかもしれません。
まとめ
長々とお付き合い下さり、ありがとうございました。
これにて前半戦(!!)終了です。
後篇では、
- 量り売りでどんなものを購入したいと思っている方が多いのか(洗剤とか調味料とかの日用品が大人気)
- 量り売りなら買いやすいのに! みたいなものもあったりするのか(スパイスとかコスメとかをお試ししたいみたい)
- 専用容器を買えって言われたらどう思います?(容器へのこだわりは意外な沼だった)
- どんな交通手段でのアクセスを想定しているのか(駐車場の確保や立地は重要ポイント)
といった項目について、これまた皆さんのコメントと私の妄想(これがいらんのよ……) 盛り盛りでお届けする予定です。
どうぞごゆるりとお待ち下さい。
※ 文中に掲載した図の配色決定にあたっては、北海度カラーユニバーサルデザイン機構ご提供の色覚シミュレーション・補助ツールを活用させて頂きました。
ありがとうございます。